社会福祉法人アイリス学園 児童養護施設アイリス学園

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2025.11.05

【吾妻中学校PTA教養講座】空先拓海さん来校、見学してきました

11/4(火)吾妻中学校でPTA主催の「教養講座」が開催されました。希望する保護者も参加可能ということでお邪魔してきました。講師は先日このコーナーでも紹介しましたアイリス学園の応援団でプロマジシャンの空先拓海さん、「夢の叶え方~人はいつでもかわることができる~」トーク&マジックショーという演題での登壇でした。

話しは私ごとになりますが、私はこども達に「人間って何で生まれてきて、生きているの?」と聞かれた時は、「それは人の役に立って、人を喜ばせて、相手も自分も幸せになるためだよ。」と答えることにしています。これは私の祖父母がいつも2つ下の妹と私に幼少のころから言い聞かせていたことです。実は私は父親の顔を知りません。もう50年も前の話しですが、現代の言葉にすれば児童相談所の相談案件になっているいずれかには該当するであろう経験を母と僕たち兄妹は幼少時にしました。しかし、それを救ってくれたのは祖父母でした。そして、先ほどの言葉を繰り返し繰り返し語り掛けて育ててくれました。私がこの道に進んで今こうして働かせていただいているのも、もしかしたら祖父母の導きかと思える時が度々あります。

今回の空先さんの講演はそのことがやはり間違っていないという想いを強く印象付けるものでした。軽快な音楽と華やかなマジック、生徒の協力を受けてのコミカルなマジック?もおり交ぜながら、彼の生い立ちや過酷な少年時代が語られはじめました。最初は明るく話していたので内容の重さを感じなかったであろう生徒たちも徐々に話しにのめりこむように静寂につつまれていきました。理不尽な家庭環境での家族関係者からの暴力、2つ上の兄が非行に走ったことにより、その友人関係の影響でいつしか空先さんも非行の道へと踏み外していきました。地元岡山県で決して優等生が集まる訳ではない高校へ進学後も、“学校の方から、もう空先は学校に来ないでくれ”とまで言われる状態となってしまった。しかし、その時に彼は彼の人生を変える重要な人物Nさんと出会っていたというのが序盤の話でした。学校を辞めた空先さんは家出をし、鉄道橋下の河川敷で1年近くのホームレス生活を送ったとのこと、ヤンキージャージにサンダルの恰好でお金もない、家もない、助けてくれる人もいない、全くの孤独だったその時に手を差しのべてくれたのがNさんだったとのこと。そこで、空先さんは、Nさんのお母さんはじめご家族に「あったかいご飯」「あったかい布団」「あったかいお風呂」そして「住む家」があることがどれだけ奇跡的なすごいことかを思い知らされたと語ります。恩師の言葉から「当たり前」の反対語は?「有ることが難しいこと」「有る難い」・・・「ありがとう」ということも学んだそうです。そして、空先さんはこう生徒たちに強く呼びかけました。マジックの内容などは忘れてもいい。ただこれから言うことは絶対に忘れないでほしい。みんなは日々「ご飯をたべ、お風呂に入り、あったかい布団で寝ているし家もある。それってホントはすごいことなんだよ。有り難いことなんだよ。だから今日、恥ずかしがらないでお家の人や今日この講座の準備をしてくれた大人の方々にひと言“ありがとうございました”ってこれから言える人になってほしいな。僕がその生活をしていたのは16の時だからちょうどみんなと同じぐらいの時にやっと有り難さがわかったから」と・・・・・。

そして、続いて衝撃的な内容が語られ始めます。Nさんの家庭で、それも家族のように生活をする日々しばらく続いた後、親友Nさんが難病に倒れたのです。それも余命いくばくもないとの医師からの宣告になす術なく呆然としていた時、空先さんの頭の中に高校時代の先輩の言葉が浮かびました。「お前手品うまいな。」・・・。「よし、Nを俺のマジックで笑かしたろ。」ひょっとしたら空先さんの人生の羅針盤が今の姿を指し示した瞬間がその時だったのかもしれません。早速、図書館でマジックの本を読み漁り勉強して、毎日毎夜面会時間いっぱいNさんの病室でマジックを見せ続けた空先さん、最初は「それ、ばればれやん。」と突っ込まれていましたが、そのうちNさんが笑って夢中で「お前すごいなあ」と褒めてくれるようになったそうです。そんな時間が経過し、余命いくばくもないと言われたNさんの体調は上向いていき、そのかけがえのない友を想う空先さんの想いが天に通じたのか、Nさんの病状はみるみる快復に向かい治癒したとのでした。

 この時の空先さんの心の中はどんな気持ちだったのでしょう?思いを馳せてみると、無意識に「大好きなN、病気のNの力になりたい。Nに笑ってほしい。Nに喜んでほしい。(Nの役に立ちたい。Nを喜ばせたい。Nを幸せな気持ちにさせたい。)」という強い気持ちだけに突き動かされて行動していたのだと思います。その結果、Nさんの病気も平癒し、空先さんはプロマジシャンへの道という自分にとって一生をかけることができる仕事にも出会えたのです。
 ご苦労の連続だった空先さんの半生、プロマジシャンとして光の当たる道を突き進む空先さんに私の中途半端な人生を重ねるなど失礼千万ではありますが、今、学園のこどもや地域住民の皆さまの応援をいただきながらお仕事をさせていただくにあたり、僕にとっての祖父母の教えは間違いではなかったと空を見上げて感謝の思いを伝えながら私自身も初心に還り帰路についたところでした。

 最後に皆さまへお詫び・・・。いつも学園のこども達、職員からは「園長の話は長い!」と言われ続けておりますが、今回はお読みいただいている皆さまからもご指摘を受ける覚悟でおります。長文乱文失礼申しあげました。どうぞお許しくださいませ。